はじめてのESG経営

若手・中堅も貢献できる:中小企業がESGで外部の専門家や支援機関を活用するヒント

Tags: ESG経営, 中小企業, 外部支援, 専門家, 支援機関, 若手社員, 実践, リソース活用

中小企業がESG経営を始める際、多くの担当者が直面するのが「どうすればいいか分からない」「専門知識がない」「人手も予算も限られている」といった課題です。ゼロからすべてを自社だけで進めるのは容易ではありません。

しかし、これらの課題を乗り越え、効果的にESG推進を進めるための有力な手段の一つに、外部の専門家や支援機関の活用があります。外部の知見やリソースを賢く借りることで、自社の限られた経営資源を補い、より効率的かつ質の高いESGへの取り組みが可能になります。

特に、若手・中堅社員の皆様にとっては、外部の情報を収集したり、専門家とのコミュニケーションを担ったりと、貢献できる範囲が広くあります。ここでは、中小企業がESGで外部支援を活用するための具体的なヒントをご紹介します。

なぜ中小企業はESGで外部支援を検討すべきなのか

中小企業が大企業と比べてESG推進において外部支援の活用を検討するべき理由はいくつかあります。

  1. 専門知識・ノウハウの不足: ESGは環境、社会、ガバナンスと幅広い領域を含み、それぞれに専門的な知識が求められます。特に排出量算定、人権デューデリジェンス、情報開示基準への対応などは、専門家のアドバイスが有効です。
  2. リソース(人材・時間)の制約: 日々の業務に追われる中で、新たな取り組みであるESGに十分な時間や人員を割くことは難しい場合があります。外部支援を利用することで、特定のタスクをアウトソースしたり、効率的な進め方に関するアドバイスを得たりできます。
  3. 客観的な視点と信頼性の向上: 外部の専門家は、社内では気づきにくい課題を発見したり、客観的な視点からアドバイスを提供したりします。また、信頼性のある第三者の意見は、社内外の関係者からの信頼を得る上でも役立ちます。

これらの理由から、外部支援の活用は、中小企業が無理なく、かつ効果的にESG経営を進めるための現実的な選択肢の一つと言えます。

どのような外部支援があるか?その特徴

ESGに関する外部支援には、様々な種類があります。自社の状況や目的に合わせて、適切な支援主体を選ぶことが重要です。

  1. 専門コンサルティング会社:

    • 特徴:ESG戦略策定、目標設定、情報開示支援、特定のテーマ(環境、人権など)に関する詳細なアドバイスなど、専門性の高いサービスを提供します。個別の課題解決に特化したサポートが期待できます。
    • メリット:自社の課題に合わせたカスタマイズされた支援を受けられます。最新の動向や基準に関する知識が豊富です。
    • 注意点:費用が高額になる場合があります。複数の会社を比較検討し、自社の課題解決に適した専門性を持つ会社を選ぶ必要があります。
  2. 行政・公的機関:

    • 特徴:国や自治体の窓口、商工会議所、よろず支援拠点などが、ESGに関する情報提供、相談対応、セミナー開催、補助金・助成金制度などを提供しています。
    • メリット:無料で利用できる相談窓口が多く、中小企業向けの支援制度が充実している場合があります。補助金などは取り組みにかかる費用負担を軽減できます。
    • 注意点:一般的な情報提供や基本的なアドバイスが中心となる場合があります。専門的な課題には対応しきれないこともあります。
  3. 金融機関:

    • 特徴:取引のある金融機関が、ESG経営に関する情報提供や、ESGに配慮した融資・投資商品などを通じた支援を行っています。サステナビリティ関連の部署を持つ金融機関もあります。
    • メリット:資金調達の面で有利になる可能性があります。本業との連携を図りやすい場合もあります。
    • 注意点:金融機関によって支援内容は異なります。自社の取り組みを積極的にアピールする必要があります。
  4. 業界団体・NPO/NGO:

    • 特徴:所属する業界団体や、特定の社会課題に取り組むNPO/NGOが、関連するESG情報や、共同での取り組み機会などを提供しています。
    • メリット:業界特有の課題に関する情報や、同じ課題意識を持つ企業との連携の機会が得られます。実践的なノウハウを共有できる場合があります。
    • 注意点:提供される情報や活動内容は、それぞれの団体の目的に特化している場合があります。

外部支援を効果的に活用するためのステップ

外部支援を最大限に活かすためには、事前の準備と活用中の連携が重要です。

  1. 目的の明確化: なぜ外部支援が必要なのか、どのような課題を解決したいのか、具体的にどのような成果を期待するのかを明確にします。例えば、「最初の重要課題特定を効率的に行いたい」「環境負荷の具体的な削減策とコスト削減効果を知りたい」「情報開示の雛形作成を手伝ってほしい」など、具体的な目的を設定します。
  2. 情報収集と比較検討: 複数の支援主体から情報を収集し、提供されるサービス内容、費用、実績、自社との相性などを比較検討します。可能であれば、過去に類似の中小企業を支援した実績があるかなどを確認することも有効です。
  3. 社内での共通認識形成: 外部支援の導入について、関係部署や経営層との間で目的や期待される成果について共通認識を持ちます。誰が窓口となり、どのように連携するかなどを事前に決めておくとスムーズです。
  4. 具体的な依頼内容・範囲の決定: 外部に依頼する業務の範囲や納品物などを具体的に定義します。あいまいな依頼は、期待した成果が得られない原因となります。
  5. 積極的な連携と情報提供: 支援期間中は、外部支援者と密に連携を取り、必要な情報を迅速に提供します。社内の実情や課題を正確に伝えることで、より的確なアドバイスや支援が得られます。
  6. 成果の共有と評価: 外部支援から得られた成果(報告書、提言、データなど)を社内で共有し、今後のESG推進活動にどう活かすかを検討します。支援内容の有効性を評価し、次回の参考にします。

若手・中堅社員が外部支援活用に貢献できること

若手・中堅社員の皆様は、外部支援の活用プロセスにおいて、様々な形で貢献することが可能です。

これらの貢献を通じて、若手・中堅社員の皆様は、外部の専門知識やノウハウを自社に取り込むプロセスの中核を担い、自身のスキルアップにも繋げることができます。

事例に見る外部支援の効果

具体的な企業名は伏せますが、中小企業が外部支援を活用してESG推進を加速させた例は多く存在します。

例えば、ある製造業の中小企業では、脱炭素への取り組みを進めるにあたり、温室効果ガス排出量の算定方法や削減目標設定に専門知識が不足していました。そこで、環境分野に詳しいコンサルティング会社に依頼し、精度の高い排出量算定と、現実的かつ意欲的な削減目標の設定を行いました。これにより、具体的な削減計画の策定に進むことができ、自治体の補助金申請にも繋がりました。

また別のサービス業の中小企業では、従業員のウェルビーイング向上をESGの重要課題と位置づけましたが、どのような施策が有効か、効果測定をどう行うか悩んでいました。外部の労務コンサルタントや健康経営に関する専門家の助言を得て、従業員アンケートの設計、具体的な施策(例えば、柔軟な働き方の導入、メンタルヘルスケアプログラム)の選定、そしてその効果を測るための指標設定を行いました。これにより、従業員の満足度向上だけでなく、離職率低下や生産性向上といった経営成果にも繋がり始めました。

これらの事例から、外部支援は単に専門知識を提供するだけでなく、具体的なアクションへの道筋を示し、成果を可視化する上で有効であることが分かります。

まとめ

中小企業がESG経営に初めて取り組む際、外部の専門家や支援機関の力を借りることは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、限られたリソースを有効活用し、より効率的かつ効果的にESG推進を進めるための賢明な選択と言えます。

どのような外部支援があるかを知り、自社の目的と課題を明確にした上で、適切な支援主体を選び、積極的に連携することが成功の鍵です。特に若手・中堅社員の皆様は、情報収集や外部との窓口、社内調整などを通じて、このプロセスに大きく貢献できます。

外部の知見を取り入れながら、一歩ずつ着実にESG経営を進めていくことが、企業の持続的な成長に繋がるでしょう。